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産地:日本
区分:洗顔ソープ・石けん
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2021年12月09日

ユダヤ人の起源・その4

ユダヤ人の起源・その4

この一連の記事では『創世記』の記述から、ユダヤ人の起源を調べています。日本語訳はウィキソースの口語訳を参照しています。
ユダヤ人の起源・その3はこちら
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ヤコブの祖父はアブラハム、父はイサクで母がリベカです。ヤコブは父を騙して双子の兄エサウから長子の特権を奪いました。エサウは激怒し、殺されると思ったヤコブは母リベカの兄ラバンのもとに身を寄せました。逃亡の途上、ヤコブは天使が上り下りする梯子の夢を見て、自分の子孫が偉大な民族になるという神の約束を受けました。ヤコブはラバンの娘であるレアとラケルの姉妹と結婚し、財産を築いて独立し、帰郷の旅に出ました。途中、ヤコブは兄エサウと和解しようと思って使者を送りましたが、エサウはどうやら対戦するつもりのようで、ヤコブは激しく恐れ、神に救いを求めました。

ヤコブ、イスラエルになる

この記事は『創世記 第三十二章』の後半から始まります。神に救いを求めた後のヤコブは、「その夜そこに宿り、持ち物のうちから兄エサウへの贈り物を選んだ」とあります。この時代のこの地方のことなので、贈り物は家畜です。ヤコブは、しもべたちに対し、それぞれの間を十分保って贈り物を運んで行くよう指示しました。先頭となるしもべには、「もし、兄エサウがあなたに会って」、「だれのしもべで、どこへ行くのか。あなたの前にあるこれらのものはだれの物か」と尋ねたら、「あなたのしもべヤコブの物で、わが主エサウにおくる贈り物です。彼もわたしたちのうしろにおります」と答えるように命じました。「第二の者にも、第三の者にも」同じように命じました。

ヤコブは「さきに送る贈り物をもってまず彼をなだめ、それから、彼の顔を見よう。そうすれば、彼はわたしを迎えてくれるであろう」と考えたのでした。ヤコブは「その夜起きて、ふたりの妻とふたりのつかえめと十一人の子どもとを連れてヤボクの渡しをわたった」とのことです。ヤボク川とは、ヨルダン川の支流であるザルカ川ことです。

全ての使者や家族らを先に渡らせ、ヤコブは最後に渡ろうとしていました。「ヤコブはひとりあとに残ったが、ひとりの人が、夜明けまで彼と組打ちした」とのことです。「その人はヤコブに勝てないのを見て、ヤコブのもものつがいにさわったので、ヤコブのもものつがいが、その人と組打ちするあいだにはずれ」ました。「もものつがい」とはヘブライ語では「カフ ヤれふ」で、「カフ」は「掌、くぼみ、スプーン」などの意味です。「ヤれふ」は骨盤と膝の間の大腿部のことです。「カフ ヤれふ」とは、お椀形の骨と球体形の骨が連結した股関節のことです。ヤコブは勝負には勝っていたものの、股関節脱臼させられたのでした。

それでもヤコブは格闘を諦めなかったのか、その人は根負けして「夜が明けるからわたしを去らせてください」と言いました。ヤコブは「わたしを祝福してくださらないなら、あなたを去らせません」と言って引き下がりません。その人はヤコブに「マ シェムは(貴男の名前は何ですか)」と尋ねたので、ヤコブは「ヤコブです」と答えました。するとその人は「あなたはもはや名をヤコブと言わず、イスラエル(イスらエル)と言いなさい。あなたが神と人とに、力を争って勝ったからです」と言いました。「格闘する」という動詞が「サら」で、「神」は「エロヒム」で「エル」とも言います。

ヤコブはその人に「あなたの名を知らせてください」と言ったのに、その人は、「なぜあなたはわたしの名をきくのですか」と言って答えませんでした。けれどもその人はヤコブを祝福してくれました。「ヤコブはその所の名をペニエルと名づけ」ました。「わたしは顔と顔をあわせて神を見たが、なお生きている」と思ったからでした。「顔」が「パニム」で「神」が「エル」です。ヤコブと格闘した人は名を名乗らなかったのですが、ヤコブは彼を神YHVHだと思ったのでしょう。

朝になってその場を離れるヤコブは「そのもものゆえにびっこを引いてい」ました。「そのため、イスラエルの子ら(ブネィ イスらエル)は今日まで、もものつがいの上にある腰の筋を食べない。かの人がヤコブのもものつがい、すなわち腰の筋にさわったからである」とのことです。

『創世記 第三十三章』は、いよいよエサウとの対面の場面です。川を越えたヤコブ一行は「エサウが四百人を率いて来るのを見」ました。そこでヤコブは、「(ふたりの)つかえめとその子供たちをまっ先に置き、レアとその子供たちを次に置き、ラケルとヨセフを最後に置」きました。すなわちヤコブは最愛の妻ラケルとその子供をエサウの攻撃から最も安全な位置に置いたのでした。一方ヤコブは「みずから彼らの前に進み、七たび身を地にかがめて」、つまり、自分は逃げず先頭に立ち、相当の警戒をして「兄に近づいた」のですが、驚くべきことに「エサウは走ってきて迎え、彼を抱き、そのくびをかかえて口づけし、共に泣いた」のでした。つまりエサウは弟と対戦するつもりは毛頭無かったのでした。

「エサウは目をあげて女と子供たちを見て」、「あなたと一緒にいるこれらの者はだれですか」と尋ねたので、ヤコブは「神がしもべに授けられた子供たちです」と答えました。ヤコブの妻子らは、列に並べられた順でエサウに近寄ってお辞儀しました。すなわち、つかえめたちとその子供たち、レアとその子供たち、ラケルとヨセフがそれぞれ近寄ってお辞儀しました。

ヤコブがエサウに贈り物とした家畜に関しては、エサウは「弟よ、わたしはじゅうぶんもっている。あなたの物はあなたのものにしなさい」と言いました。ヤコブは「いいえ、もしわたしがあなたの前に恵みを得るなら、どうか、わたしの手から贈り物を受けてください。あなたが喜んでわたしを迎えてくださるので、あなたの顔を見て、神の顔を見るように思います」と言って譲らなかったので、エサウはヤコブの贈り物を受け取りました。ここでの両者のやり取りは、弟は兄を敬い、兄は弟からの贈り物に最初は遠慮を示し、日本人的な感覚から見ても好感が持てる程、お互いに礼儀正しかったと思います。

そうしてエサウは「さあ、立って行こう。わたしが先に行く」とヤコブを誘ったのですが、ヤコブが言うには、「子供たちは、かよわく」、また子羊や子牛もいたので、もうこれ以上は歩かせられないと言って「わたしはわたしの前にいる家畜と子供たちの歩みに合わせて、ゆっくり歩いて行き、セイルでわが主(アドナィ=エサウのこと)と一緒になりましょう」と答え、エサウと一緒には行きませんでした。「その日エサウはセイルへの帰途についた」とのことです。セイルは、エサウのが住んでいるエドムにある山です。

ヤコブはまず最初に「スコテに行き、自分のために家を建て、また家畜のために小屋を造った」とのことです。スコテはヨルダン川の東で、ヤボク川の北岸にあります。スコテとは「sukot」=「仮庵」と同じ言葉です。その後ヤコブは「カナンの地のシケムの町に着き」ました。シケムは、「シェケム」とも書かれ、ヘブライ語の発音では「シェへム」となります。場所は現在のパレスチナ自治区であるヨルダン川西岸地区の北半分の中央部にあるナーブルスだとされています。ヤコブの祖父アブラハムも、メソポタミア北部からカナンの地に入った時に一番最初に留まった場所が同じくシケムでした



ヤコブはシケムの町の前に宿営し、「天幕を張った野の一部をシケムの父ハモルの子らの手から百ケシタで買い取り」、「そこに祭壇を建てて、これをエル・エロヘ・イスラエルと名づけた」とのことです。「ケスィタ」は当時の貨幣単位ですが、『創世記』ではここにしか出て来ない単語で、その価値や重さは分かっていない、とのことです。
https://en.wikipedia.org/wiki/Kesitah

ヤコブの息子シメオンとレビ

『創世記 第三十四章』では、ヤコブ一家に問題が降りかかります。「レアがヤコブに産んだ娘デナはその地の女たちに会おうと出かけて行ったが」、「ヒビびとハモルの子シケム(シェへム)が彼女を見て、引き入れ、これと寝てはずかしめた」とのことです。シケムはその地の君主「ナスィ ハ・アれツ」でした。シケムは「深くヤコブの娘デナを慕い、この娘を愛し」ました。そこでシケムは父ハモルに「この娘をわたしの妻にめとってください」と言いました。

「さてヤコブはシケムが、娘デナを汚したことを聞いたけれども、その子らが家畜を連れて野にいたので、彼らの帰るまで黙っていた」、つまり自分では結論を出しませんでした。「シケムの父ハモルはヤコブと話し合おうと、ヤコブの所に出てきた」のですが、その時「ヤコブの子らは野から帰り、この事を聞いて、悲しみ、かつ非常に怒」りました。なぜなら「シケムがヤコブの娘と寝て、イスラエルに愚かなことをしたためで、こんなことは、してはならぬ事だからである」と考えたからです。「イスラエル」はヤコブの別名ですが、ここでは父の名前というよりは、自分たちを含めたヤコブ一家という抽象的な概念で使われているように思えます。

ハモルは「わたしの子シケムはあなたがたの娘を心に慕っています。どうか彼女を彼の妻にください」とヤコブ一家に頼みました。そして「あなたがたはわたしたちと婚姻し、あなたがたの娘をわたしたちに与え、わたしたちの娘をあなたがたにめとってください」、「こうしてあなたがたとわたしたちとは一緒に住みましょう」、「ここに住んで取引し、ここで財産を獲なさい」と両家が今後も姻族関係となることを提案してきました。婿となるシケム本人もまた「デナの父と兄弟たちとに」、「たくさんの結納金と贈り物とをお求めになっても、あなたがたの言われるとおりさしあげます。ただこの娘はわたしの妻にください」と願いました。最初の出会いは行きずりだったとはいえ、彼のデナへの思いは本気でした。「しかし、ヤコブの子らはシケムが彼らの妹デナを汚したので、シケムとその父ハモルに偽って答え」ました。

つまり、ヤコブの子らは家本位の"古臭い?"価値観を持っていて、デナの気持ちを確かめることも無く、一方的に反対したのでした。"古臭い"とはいえ、その古臭さが確立し始めたのがこの頃です。アブラハムの妻は異母妹サラであり、おそらく幼い時から馴染んだ許嫁のような存在だったのかもしれません。イサクの妻リベカは、遠い親族ではありましたが、夫となる本人を見ないまま、運命を信じて自ら決意してイサクに嫁ぎました。ヤコブは伯父ラバンの娘ラケルに恋しましたが、結婚を許されるまで何年も伯父のもとで働いたので、ラケルにも情は通じたことでしょう。ヤコブの兄で本来はイサクの嫡男であったエサウは、親族ではない部族の娘と結婚したので、彼の自由意志での結婚だったと思われます。家の名誉で女性の意思が顧みられない"古臭さ"は、ヤコブの子らの世代で成立したのもだと考えられます。

さて、ヤコブの子らによる偽りの答えとは、「われわれは割礼を受けない者に妹をやる事はできません。それはわれわれの恥とするところですから」ということでした。「もしあなたがたのうち男子がみな割礼を受けて、われわれのようになるなら」、「われわれの娘をあなたがたに与え、あなたがたの娘をわれわれにめとりましょう。そしてわれわれはあなたがたと一緒に住んで一つの民となりましょう」、「けれども、もしあなたがたがわれわれに聞かず、割礼を受けないなら、われわれは娘を連れて行きます」と答えたのでした。この言葉は「偽り」=「ミるマ」でしたが、若者シケムは信用しました。「彼がヤコブの娘を愛したからである。また彼は父の家のうちで一番重んじられた者であった」とのことです。

「そこでハモルとその子シケムとは町の門に行き」、「この人々(=ヤコブ一家)はわれわれと親しいから、この地に住まわせて、ここで取引をさせよう。地は広く、彼らをいれるにじゅうぶんである。そしてわれわれは彼らの娘を妻にめとり、われわれの娘を彼らに与えよう」、「彼らが割礼を受けているように、もしわれわれのうちの男子が皆、割礼を受けるなら、ただこの事だけで、この人々はわれわれに同意し、われわれと一緒に住んで一つの民となるのだ」、「そうすれば彼らの家畜と財産とすべての獣とは、われわれのものとなるではないか。ただわれわれが彼らに同意すれば、彼らはわれわれと一緒に住むであろう」と、自分たちの利益を強調して町の人々を説き伏せました。

「そこで町の門に出入りする者はみなハモルとその子シケムとに聞き従って」、「すべての男子は割礼を受けた」とのことです。しかし「三日目になって彼らが痛みを覚えている時、ヤコブのふたりの子、すなわちデナの兄弟シメオンとレビとは、おのおのつるぎを取って、不意に町を襲い、男子をことごとく殺し」、「またつるぎの刃にかけてハモルとその子シケムとを殺し、シケムの家からデナを連れ出した」とのことです。デナの同母兄であり、ヤコブの次男と三男であるシメオンとレビは、「彼らが妹を汚したから」という理由で、「羊、牛、ろば及び町にあるものと、野にあるもの」、「並びにすべての貨財を奪い、その子女と妻たちを皆とりこにし、家の中にある物をことごとくかすめた」というように、その町全体を強奪するという酷い暴挙に出たのでした。

「そこでヤコブはシメオンとレビとに」、「あなたがたはわたしをこの地の住民、カナンびととペリジびとに忌みきらわせ、わたしに迷惑をかけた。わたしは、人数が少ないから、彼らが集まってわたしを攻め撃つならば、わたしも家族も滅ぼされるであろう」と言って、彼らを叱りました。シメオンとレビは「わたしたちの妹を遊女(ゾナ)のように彼が扱ってよいのですか」と反論しました。この話はこれで終わりで、ヤコブは悪事を働いたシメオンとレビに押し切られた感じで終わります。

ヤコブの息子ベニヤミンとルベン

『創世記 第三十五章』では、こんな最低な状態のヤコブに神様が救いの手を差し伸べます。「ときに神はヤコブに言われた」とのことで、それは「あなたは立ってベテルに上り、そこに住んで、あなたがさきに兄エサウの顔を避けてのがれる時、あなたに現れた神に祭壇を造りなさい」とのことでした。ベテルとは、ヤコブが生まれ故郷のカナンの地を離れてメソポタミア北部へ移動する途中で一夜を過ごし、「ヤコブの梯子」の夢を見て、神YHVHと初めて会話した場所で、ベテルは、現在のパレスチナ自治区であるヨルダン川西岸地区の西端のエルサレムの北にあるベイティンではないかというのが通説になっています。

そこでヤコブは、「その家族および共にいるすべての者に」、「あなたがたのうちにある異なる神々を捨て、身を清めて着物を着替えなさい」、「われわれは立ってベテルに上り」、「わたしの行く道で共におられた神に祭壇を造ろう」と言いました。妻のラケルはメソポタミア北部の実家を離れる時、実家にあったテラピム(=家族神の神像)を持ち出していました。

このように、妻たちや家来たちなどは、神YHVHではないそれぞれの神様を崇拝していたのです。ヤコブは、それらの神様を捨てて神YHVHを信仰するように家の者たちに命じたのでした。「そこで彼らは持っている異なる神々と、耳につけている耳輪をことごとくヤコブに与えたので、ヤコブはこれをシケムのほとりにあるテレビンの木(エラ)の下に埋めた」とのことです。「テレビンの木」とは樫の木に似たその地方独自の木で、祖父アブラハムはいつもテレビンの木(エロン)の下に住んでいました。

ヤコブ一行はベテルに到着しました。「彼はそこに祭壇を築き、その所をエル・ベテルと名づけた。彼が兄の顔を避けてのがれる時、神がそこで彼に現れたからである」とのことです。その直後、ヤコブの母である「リベカのうばデボラが死んで、ベテルのしもの、かしの木(アロン)の下に葬られ」ました。デボラという女性はここでしか言及されていません。「さてヤコブがパダンアラムから帰ってきた時、神は再び彼に現れて彼を祝福され」ました。神は彼に、「あなたの名はヤコブである。しかしあなたの名をもはやヤコブと呼んではならない。あなたの名をイスラエルとしなさい」と言いました。ヤコブが神に「イスラエル」と改名しろ言われたのはこれが二度目です。

神はさらに、「わたしは全能の神である。あなたは生めよ、またふえよ。一つの国民、また多くの国民があなたから出て、王たちがあなたの身から出るであろう」、「わたしはアブラハムとイサクとに与えた地を、あなたに与えよう。またあなたの後の子孫にその地を与えよう」と彼に言いました。「そこでヤコブは神が自分と語られたその場所に、一本の石の柱を立て、その上に灌祭をささげ、また油を注い」で、「その場所をベテルと名づけ」ました。ここではまたヤコブはヤコブと呼ばれています。

ヤコブの性格は一言で言うと真面目です。妻の父である伯父ラバンには忠実に従い、ただし彼から独立する時は自らの強い意志を示して実行し、兄エサウとの和解では緻密な作戦を立てた上、勇敢に先頭にも立ちました。老成してからは事を荒立てず静観する立場になったもようで、ヤコブは今まで出て来た登場人物の中では最も"人格者"であり、「イスラエル」の名に相応しいと思います。

その後ヤコブ一家は、「こうして彼らはベテルを立ったが、エフラタに行き着くまでに、なお隔たりのある所でラケルは産気づき、その産は重かった」とのことです。難産のため死にそうになったラケルは「魂の去ろうとする時、子の名をベノニと呼んだ。しかし、父はこれをベニヤミンと名づけ」ました。「ベノニ」とは「ベン オニ」で「ベン」は「息子」、「オニ」は聖書の言葉で「私の苦痛」という意味です。現代ヘブライ語では同じ綴りで「私の力」という意味になります。「ベニヤミン」は「ベン ヤミン」で、「右の息子」という意味です。

そこでそのまま亡くなったラケルはその場所「エフラタ、すなわちベツレヘムの道に葬られ」ました。ベツレヘムは、現在のパレスチナ自治区であるヨルダン川西岸地区の西端のエルサレムの南にあります。「ヤコブはその墓に柱を立てた。これはラケルの墓の柱であって、今日に至っている」とのことです。

ここで言う「今日」とは、『創世記』が書かれた当時のことですが、現在でもそこには「ラケル廟」があります。そこがラケルの墓であることは紀元後4世紀初頭に記録があり、現在の建物はオスマントルコ帝国時代に建立されたとのことです。
https://en.wikipedia.org/wiki/Rachel%27s_Tomb

次に「イスラエルはまた、いで立ってミグダル・エダルの向こうに天幕を張った」とあります。ここで初めてヤコブはイスラエルと呼ばれました。「ミグダル」は「塔」、「ミグダル・エダル」はベツレヘムの近くにあったとされます。次に起こった出来事は、「イスラエルがその地に住んでいた時、ルベンは父のそばめビルハのところへ行って、これと寝た。イスラエルはこれを聞いた」ということでしたが、この話は深追いされていません。ヤコブは事を荒立てない性格なのでしょう。

その次には「さてヤコブの子らは十二人であった」とあり、ここでは呼び方がまたヤコブに戻ってしまいます。「すなわちレアの子らはヤコブの長子ルベンとシメオン、レビ、ユダ、イッサカル、ゼブルン」、「ラケルの子らはヨセフとベニヤミン」、「ラケルのつかえめビルハの子らはダンとナフタリ」、「レアのつかえめジルパの子らはガドとアセル」です。



次にヤコブは「ヘブロンのマムレにいる父イサクのもとへ行」きました。「ここはアブラハムとイサクとが寄留した所」です。「イサクの年は百八十歳であった」、「イサクは年老い、日満ちて息絶え、死んで、その民に加えられた。その子エサウとヤコブとは、これを葬った」とのことです。

『創世記 第三十六章』では、ヤコブの兄エサウの系図が述べられています。「エサウは妻と子と娘と家のすべての人、家畜とすべての獣、またカナンの地で獲たすべての財産を携え、兄弟ヤコブを離れてほかの地へ行った」とのことです。「彼らの財産が多くて、一緒にいることができなかったからである。すなわち彼らが寄留した地は彼らの家畜のゆえに、彼らをささえることができなかったのである」とのことで、彼らは牧畜民なので財産である家畜が増えると分家する必要があるのでしょう。

「こうしてエサウはセイルの山地に住んだ。エサウはすなわちエドムである」とあります。エサウの子孫からはエドムの地を治める王たちが多数輩出されました。エサウはヤコブに長子の特権を奪われて、その時は弟を殺したくも思いましたが、それは一時的に激昂したためであって、その後はひとり立ちして精神的にも成長し、弟が戻って来た時にはわだかまりなく彼を受け入れました。彼は思慮深いタイプではないですが、根に持たない点が長所なのだろうと思います。

ヤコブの息子ヨセフ


『創世記 第三十七章』には「ヤコブは父の寄留の地、すなわちカナンの地に住んだ」とあります。ヤコブの最愛の妻ラケルの産んだ第一子はヨセフです。ヨセフが生まれた時には、他の三人の妻との間に生まれた異母兄が十人いました。「ヨセフは十七歳の時、兄弟たちと共に羊の群れを飼っていた。彼はまだ子供で、父の妻たちビルハとジルパとの子らと共にいたが、ヨセフは彼らの悪いうわさを父に告げた」とのことです。「ヨセフは年寄り子であったから、イスラエル(=父ヤコブ)は他のどの子よりも彼を愛して、彼のために長そでの着物ををつくった」とのことでした。

しかし「兄弟たちは父がどの兄弟よりも彼を愛するのを見て、彼を憎み、穏やかに彼に語ることができなかった」とのことで、ヤコブの愛情はヨセフに偏っていたので、異母兄たちから恨まれたのでした。しかしヨセフもまた異母兄たちの陰口を父に言ってるので、これでは憎まれても仕方ないと思います。

「ある時、ヨセフは夢を見て、それを兄弟たちに話し」ました。ヨセフが見た夢は「わたしたちが畑の中で束を結わえていたとき、わたしの束が起きて立つと、あなたがたの束がまわりにきて、わたしの束を拝みました」というもので、これをそのまま異母兄たちに語ったので、彼らは「彼の夢とその言葉のゆえにますます彼を憎んだ」とのことです。ヨセフは父母に愛されて育ったので大らかなのでしょうが、天真爛漫すぎて嫌われてしまうタイプのようです。

「ヨセフはまた一つの夢を見て」、「父と兄弟たちに」、「わたしはまた夢を見ました。日と月と十一の星とがわたしを拝みました」と語りました。これには父も驚き、「あなたが見たその夢はどういうのか。ほんとうにわたしとあなたの母と、兄弟たちとが行って地に伏し、あなたを拝むのか」とヨセフを問い質しました。「兄弟たちは彼をねたんだ。しかし父はこの言葉を心にとめた」とのことです。

話は変わって、「さて兄弟たちがシケムに行って、父の羊の群れを飼っていたとき」、「イスラエル(=父ヤコブ)はヨセフに」、「あなたの兄弟たちはシケムで羊を飼っているではないか。さあ、あなたを彼らの所へつかわそう」と言いました。ヨセフは父に「はい、行きます」と答えました。父の要望は「どうか、行って、あなたの兄弟たちは無事であるか、また群れは無事であるか見てきて、わたしに知らせてください」とのことでした。

ヨセフはシケムに行き、「野をさまよって」いると、ひとりの人が「あなたは何を捜しているのですか」と尋ねてくれました。ヨセフは、「兄弟たちを捜しているのです。彼らが、どこで羊を飼っているのか、どうぞわたしに知らせてください」と言うと、その人は「彼らはここを去りました」と答えました。その人は彼らが「ドタンへ行こう」と言うのを聞いたとのことだったので、「ヨセフは兄弟たちのあとを追って行って、ドタンで彼らに会」いました。ドタンは現在のビル・アルバシャの近くとされていて、現在のパレスチナ自治区であるヨルダン川西岸地区の北部にあります。

「ヨセフが彼らに近づかないうちに、彼らははるかにヨセフを見て、これを殺そうと計り」、ヨセフのことを「あの夢見る者がやって来る」と言って嘲り、「さあ、彼を殺して穴に投げ入れ、悪い獣が彼を食ったと言おう。そして彼の夢がどうなるか見よう」と互いに言い合いました。

しかし長兄のルベンは「ヨセフを彼らの手から救いだして父に返すため」、「われわれは彼の命を取ってはならない」、「血を流してはいけない。彼を荒野のこの穴に投げ入れよう。彼に手をくだしてはならない」と弟たちを諫めました。

「さて、ヨセフが兄弟たちのもとへ行くと、彼らはヨセフの着物、彼が着ていた長そでの着物をはぎとり」、「彼を捕えて穴に投げ入れ」ました。「こうして彼らはすわってパンを食べた。時に彼らが目をあげて見ると、イシマエルびとの隊商が、らくだに香料と、乳香と、もつやくとを負わせてエジプトへ下り行こうとギレアデからやってき」ました。ギレアデはヨルダン川東にある山地です。
  
その時、四男のユダは「われわれが弟を殺し、その血を隠して何の益があろう」、「さあ、われわれは彼をイシマエルびとに売ろう。彼はわれわれの兄弟、われわれの肉身だから、彼に手を下してはならない」と兄弟たちに提案し、聞き入れられました。「時にミデアンびとの商人たちが通りかかったので、彼らはヨセフを穴から引き上げ、銀二十シケルでヨセフをイシマエルびとに売った。彼らはヨセフをエジプトへ連れて行った」とのことです。「ミデアン」はアブラハムと後妻の間の六人の子のひとりの名です。「シケル」とは古代ユダヤの通貨単位であり、現在のイスラエルの通貨単位「シェケル」ですが、ここのヘブライ語原文には「シケル」という単語は無く、「銀二十」です。アブラハムが妻のサラを葬るためにヘテびとエフロンから土地を購入した時は「銀四百シケル」を支払いました。

ユダたちがヨセフをイシマエルびとに売った時、長兄ルベンはその場にはいなかったようで、「さてルベンは穴に帰って見たが、ヨセフが穴の中にいなかった」とのことでした。ルベンは「あの子はいない。ああ、わたしはどこへ行くことができよう」とうろたえました。

「彼らはヨセフの着物を取り、雄やぎを殺して、着物をその血に浸し」、「その長そでの着物を父に持ち帰って」、「わたしたちはこれを見つけましたが、これはあなたの子の着物か、どうか見さだめてください」と言いました。「父はこれを見さだめて」、「わが子の着物だ。悪い獣が彼を食ったのだ。確かにヨセフはかみ裂かれたのだ」と言って彼らの策略に騙されてしまいました。

最愛の息子を失った「ヤコブは衣服を裂き、荒布を腰にまとって、長い間その子のために嘆いた」とのことです。ヤコブの「子らと娘らとは皆立って彼を慰めようとしたが、彼は慰められるのを拒んで」、「いや、わたしは嘆きながら陰府(シェオラ)に下って、わが子のもとへ行こう」と言い、「父は彼のために泣いた」のでした。

ヤコブ本人には何の落ち度は無いものの、彼は息子たちに苦しめられました。「さて、かのミデアンびとらはエジプトでパロ(=ファラオ)の役人、侍衛長ポテパルにヨセフを売った」で、この章は終わります。

ヤコブの息子ユダ


『創世記 第三十八章』はヤコブの四男ユダの話です。「そのころユダは兄弟たちを離れて下り、アドラムびとで、名をヒラという者の所へ行った」とのことです。アドラムは、イスラエルと現在のパレスチナ自治区であるヨルダン川西岸地区の南部のちょうど国境付近にあり、古代都市の遺跡が残っています。ユダはそこで、カナンびとシュアの娘と結婚しました。この名無しの妻は、エル、オナン、シラという三人の息子を生みました。

「ユダは長子エルのために、名をタマルという妻を迎え」ました。「しかしユダの長子エルは主の前に悪い者であったので、主は彼を殺された」とのことです。長男エルが死んだので、ユダは次男のオナンに「兄の妻の所にはいって、彼女をめとり、兄に子供を得させなさい」と言いました。死んだ長男の代わりに嫁に嫡子を産ませるという計画だったのでしょう。「しかしオナンはその子が自分のものとならないのを知っていたので、兄の妻の所にはいった時、兄に子を得させないために地に洩らした」とのことです。「彼のした事は主の前に悪かったので、主は彼をも殺された」、つまり、次男オナンも死にました。残っているのは三男のシラだけです。

ユダは長男の嫁タマルに、「わたしの子シラが成人するまで、寡婦のままで、あなたの父の家にいなさい」と言いました。実はユダは、「シラもまた兄弟たちのように死ぬかもしれない」、つまり、長男次男が死んだのは神の意思なのに、ユダは嫁のタマルのせいだと思っていたのです。そうとも知らないタマルは素直に「父の家におった」とのことです。

日がたって、ユダの妻は死にました。その後、喪が終わり、ユダは「その友アドラムびとヒラと共にテムナに上り」ました。テムナは現在のティムナで、アドラムの近くにあります。タマルはある人から「あなたのしゅうとが羊の毛を切るためにテムナに上って来る」という情報を得ました。すると「彼女は寡婦の衣服を脱ぎすて、被衣で身をおおい隠して、テムナへ行く道のかたわらにあるエナイムの入口にすわっていた。彼女はシラが成人したのに、自分がその妻にされないのを知ったからである」とのことです。つまり、三男シラの嫁にするというのは義父ユダの嘘だと分かったので、何がしかの報復をしようと考えたのでしょう。

「ユダは彼女を見たとき、彼女が顔をおおっていたため、遊女(ゾナ)だと思い」、本来は長男の嫁であったタマルに対し「さあ、あなたの所にはいらせておくれ」と言いました。もちろんユダは「この女がわが子の妻であることを知らなかったから」です。タマルは「わたしの所にはいるため、何をくださいますか」とユダに報酬を求めました。ユダは「群れのうちのやぎの子をあなたにあげよう」と答えたので、タマルは「それをくださるまで、しるしをわたしにくださいますか」と言って、報酬を得るまでの保証として「あなたの印と紐と、あなたの手にあるつえとを」要求してユダからもらいました。ユダは「彼女の所にはい」り、「彼女はユダによってみごも」りました。タマルは「被衣を脱いで寡婦の衣服を着」て、そこから去りました。

「ユダはその女からしるしを取りもどそうと、その友アドラムびとに託して」、約束の報酬であるやぎの子を彼女に送ろうとしました。そこでそのアドラムびとはその所の人々に「エナイムで道のかたわらにいた遊女はどこにいますか」と尋ねてみたのですが、彼らの答えは「ここには遊女はいません」とのことだったので、それをユダに伝えました。仕方なくユダは「女に持たせておこう」と保留しておきました。

「ところが三月ほどたって、ひとりの人が」、「あなたの嫁タマルは姦淫しました。そのうえ、彼女は姦淫によってみごもりました」とユダに伝えました。これに怒ったユダは、タマルを「引き出して焼いてしまえ」と命じました。タマルは、「わたしはこれをもっている人によって、みごもりました」と言って、「どうか、この印と、紐と、つえとはだれのものか、見定めてください」と、ユダが彼女に与えたしるしを突き付けました。これにはお手上げとなったユダは「彼女はわたしよりも正しい。わたしが彼女をわが子シラに与えなかったためである」と、素直に自らの非を認めました。

「さて彼女の出産の時がきたが、胎内には、ふたごがあった」とのことでしたが、「出産の時に、ひとりの子が手を出したので、産婆は」、「これがさきに出た」と言い、「緋の糸を取って、その手に結」びましたが、その手はひっこみ、弟が先に生まれ出て来ました。その後に「手に緋の糸のある兄が出」て来ました。産婆は弟に「どうしてあなたは自分で破って出るのか」と言ったので、ペレヅという名になりました。「ペれツ」とは「突出」というような意味の名詞です。兄の方の名はゼラです。

アブラハム、イサク、ヤコブの時代には、正妻の他に妾はいても、遊女は登場しませんでした。ヤコブの子らの世代以降で登場します。ヤコブの娘デナは、いきなりシケムに襲われて関係を持ったので、兄たちは妹が「遊女のように扱われた」と怒りました。ヤコブの息子ユダは遊女に扮したタマルに引っかかり、彼女はユダの子をもうけました。つまり、ヤコブ一家の周辺では遊女の存在はごく普通だったと思われます。しかしテムナ近辺には遊女はいないという証言もあるので、遊女の存在はまだ広域での慣習とは言えず、一部地域の慣習であった可能性があります。

「遊女」や「売春」の歴史は、古代メソポタミア文明の地では宗教行事に関連した「神聖娼婦」という慣習が一般的にあったと、 紀元前5世紀の古代ギリシャの歴史家ヘロドトスが記しています。紀元前18世紀の古代メソポタミアのハンムラビ法典では、神聖娼婦には既婚女性と同等の権利が認められ、相続権や財産権を有するという規定がありました。神聖ではない普通の遊女の存在は、中近東の例ではタマルが示した事例が初出なのではないかと思われます。
https://en.wikipedia.org/wiki/Sacred_prostitution
https://en.wikipedia.org/wiki/History_of_prostitution#Ancient_Near_East

ユダヤ人の起源・その5はこちら(準備中)





posted by リングビスケット at 17:08| ユダヤ教豆知識 | |